ある朝の記憶喪失

  • Posted on 6月 13, 2011 at 3:46 PM

気味の悪いぐらい静かな朝だった。

僕は目覚めた。いつもの朝、いつもの時間に、いつものベッドの上で・・・。

横には一匹の年老いた猫。

猫の頭をひとしきり撫で、ベッドを降りてカーテンを開ける。

変わらない行動、習慣、そして変わりようのない景色。

でもなぜだろう、この言いようのない不安。

頭の中から何かがすっぽり抜け落ちしてしまったかのような・・・。

なんだか無性に気分が悪い。

疲れているのか?

おかしいな。昨日飲みすぎたわけでもないのに・・・。

昨日・・・?そういえば昨日誰と会っていた?いつ帰ってきたんだっけ?

思い出せない。頭の中に言葉の一片さえも浮かんでこない。

僕が記憶を無くすほど飲むなんてことはありえない。なぜ思い出せない。

何気に猫を見る。猫は一心に僕を見つめ声をあげる。

名前を呼ぼうとしたが出てこない。

どうかしてる・・・。ストレス性の記憶障害か?それとも頭でもぶつけたか・・・。

混乱する頭を振りながら、両手で髪の毛の中を探る。ぶつけたような痛みも腫れもない。

呆然と立ちすくむ僕。

ところで今日は何をすべきだったか。そろそろ会社に行く支度をしないと。

僕はシャワーを浴びるためにバスルームへ向う。

猫が足に擦り寄ってくる。

何気に抱き上げ、猫の首に顔を押し付けた時、ふと気がついた。

会社?会社って・・・どこだ?

猫を抱きしめたまま、思考をフル回転させる。

落ち着け。落ち着いて考えれば思い出せるはず。

どのぐらいそうしていたのか・・。

もがいて逃げようとする猫に軽く爪をたてられ我に返った。

覚えていないのは昨日のことだけじゃない・・・。

力が抜けて床に座り込む。

僕は・・・・・誰だ・・・・・?

そう。僕の頭の中から抜け落ちてしまったものは、まぎれもない「僕自身の記憶」だった。

つづく・・・・

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