先日、飲みに行った時のこと。
その友人は下町で小さな会社を経営している。
彼曰く、親父のあとを継いでみたけれど、景気は上向かず家族を食わせていくのに精一杯な状況らしい。
そこで少し眉をひそめるようなことを聞いた。
中小企業にあっては、法人税はともかく、消費税の支払はかなり経営を圧迫するもの。
預り金なんだからその考えがおかしいというのは横に置いておいて、彼はこの消費税を一括で払うことが難しく、分納にしてほしいと税務署にお願いに行ったらしいのだ。
そして、無事分納の手続きを踏み支払をすることになった。
ところがだ…。
これもまた企業経営にはよくあることなのだけれど、あてにしていた売掛の入金が先方の都合で大幅に遅れることになった。
いつの世もある下請けの悲しい現実。
なので彼は一度目の支払の後、また税務署に相談にいったらしい。もう少し回数を増やして金額を小さくしてほしいと。
そこで窓口の女性が言い放ったのは、初めに約束したのだからそれを破るのはルール違反。他から借りてでも税金払え、払えなければ即刻財産差し押さえるという言葉。
それを聞いたとき、耳を疑ったね。
過去に滞納をしたわけでもない、納税修正をされたわけでもない、まじめに納税相談にいった人間に対して、その口のきき方はなんだと。
通常差し押さえなんてよっぽどのことがない限り一度目の約束反故で行ったりはしない。
私も元国税の人間だから、ある程度の現場の様子はわかるよ。
でもそれにしてもその言いぐさはなんだ。若い女性だったということだから正義感にあふれて思わず言ってしまったのかもしれないけれど、経済活動が回らなければ税金だって徴収できない、
払わないって言っているわけではなく、払うつもりはあるのだけれど、一度の支払金額が大きいから、小さくしてくれと頼んでいるだけでしょう。
それを、上から目線で頭ごなしに言うなんて、その上司の顔が見てみたいわ。
ここでは税務署の名前も本人の名前も書かないけれど、なんとも腹が立ったので、私なりのやり方でその子の人となりを調べてみようと思う。
昔の徴収はもっと納税者に思いやりがあって、納税者と二人三脚で納税徴収をしてた。
それがわかるからこそ、私達賦課の人間も、納税者の申告に修正項目が多数あったとしても、その会社の財務状況を見て払える範囲の中で税務指導を行ってきたの。
払えない人間に多額の賦課をして、倒産したなんていったら本末転倒だから。
消費税を払うのが厳しいと言っている会社に貸す金融機関なんて、少し考えればどの層なのかわかるでしょう。
そんなこともわからずほざいたその女は、想像力のかけらもないし公務員としても資質がないわ。
同じ場には国税の同僚もいたので、二人でそれはひどい話だとその友人を慰めたけれど、わたしの腹の中は怒りで煮えくりかえっていた。
元同僚として恥ずかしい。私の後輩なら頭ひっぱたいて明け方まで説教くらわすところだわ。